ただ食べるという行動にも2つの動作で舌が介入しています。 一つは、咀嚼しながら唾を出し、飲み込む準備段階に入るという動作。 そしてもう一つは、呼吸と共に吸入される空気による気道と消化器の交差点でのリスクを防御しながら、食道に食べ物の塊を送るために飲み込むという高い技術力を持った舌の動作です。 吸引嚥下動作で飲み込む人、すなわち乳児がお乳を吸うように飲み込む動作は、食べ物を正しく噛む習慣がない人です。 このような人は、結果的に柔らかい食べ物を好むようになり、噛む動作は必要としません、そのため消化の問題を持っている場合が考えられます。 また誤嚥性嚥下のリスクを伴います。

咀嚼

咀嚼している間の舌の役割は、上下の顎が食べ物を噛み砕き潰せるように、左右に移動させる事です。この舌の行動は食べ物に唾液を混ぜさせ、飲み込む準備をさせます。 この咀嚼行動には、良い咬合(完璧な連動ができる良い歯列)が必要とされます。 咀嚼の際に、下の歯に上の歯が与える圧のおかげで、歯の安定やバランスを良くするのです。

嚥下

嚥下は飲み込むという行動です。食べ物と同じぐらい唾液とも深い関係があります。嚥下をしている間、私達の舌が口蓋の方に押す力は一瞬高まります。そしてこの嚥下行動は、唾液を飲み込むために、毎日昼夜約1500回ほど行われています!

“ 嚥下は食べ物の手段によって違ってきます(最初は液体を飲みます):赤ちゃんは幼児や大人とは違う方法によって嚥下しています。”

幼児嚥下

摂食するために、赤ちゃんは吸啜を始めます。お母さんの乳首をしぼり出すために、口を真空状態にするため唇、頬の収縮、顎を使い、舌を上の歯茎と口蓋に押し付け、乳首を圧迫し吸います。 この機能は、赤ちゃんや幼児にしか関係のないことから「幼児嚥下」と呼ばれています。 胎児期には、赤ちゃんはすでに子宮内で授乳の練習をしており、羊水を継続的に飲み込んでいます。幼児嚥下は、流動食を吸収するためには完全に自然なことですが、7歳を超えても続けてはいけません。

成熟嚥下

成熟嚥下とは、幼児期の嚥下が自然に進化したものです。子供に固形食を食べさせるとすぐに(2歳頃、7歳以降は体系的に)、単純に食べ物を吸い込むだけでは充分ではなくなり、すり込んだり、噛まなければならなくなります。

舌は食べ物を右から左、左から右に運ぶために使われ、左右で噛むことができます。臼歯に沿って広がり、食べ物の塊や唾液を集めるために、中央部が平らで柔軟性があります。嚥下時には、口を閉じて歯を咬み合わせ、唇は柔らかい状態にします。歯が締まることで下顎が安定し、上下の歯の適切な咬み合わせができるようになります。これは調和のとれた顎の成長要因となります。舌の先端は上の切歯の後ろ側に置き、波のように上昇して食塊を喉の方に送ります。

非定型嚥下

7を超えて、幼児嚥下が続くようであれば、非定型嚥下又は機能不全と呼びます。

これは、乳首や哺乳瓶、親指などの吸引物を定期的に長時間使用することで維持されることが多いです。このタイプの嚥下は、柔らかい食べもの(ピュレ、パスタ、柔らかいパン、ひき肉など)やストローを使って飲むなどによって促進されます。これらの行動や食べ物は、子供が成熟嚥下に向けて進化することを促すものではなく、機能不全を維持したまま大人になってしまいます。

非定型嚥下とは、授乳中の赤ちゃんが行うような嚥下動作で、顎や口唇の筋肉収縮が伴います。また、舌が上下の歯間に介在し、本来行われるべき上下の歯の咬み合わせができません。非定型嚥下では、食べ物を唾液で湿らせ、口蓋で潰しながら、舌を上下に動かし飲み込みます:歯が生えているにも関わらず、子供も大人も吸引動作によって飲み込みます。

注:通常は、大臼歯によって行われる食べ物の塊をかみ砕く作業を舌が補います。

 

 

食べ物と健康に対する影響

食べ物の咀嚼が不十分だと、唾液による消化前の作用がうまく働かず、消化機能がいつも以上に働くようになってしまいます。

咀嚼・嚥下機能には舌が非常に重要な役割を持つため、舌機能不全が摂食障害につながることは容易に理解できます。長期的には、非定型の咀嚼や嚥下は、歯の植え方や顔の発育、あるいは頭部の姿勢や間接的に身体に重要な影響を及ぼします。