静寂時の舌が生理的な位置ではない場合は、骨や歯の成長、及び呼吸機能に悪影響を及ぼします。

人が飲み込んだり話したりしていないときは、舌が安静の状態であると言います。この安静時の舌位置の影響が重要です。舌の先端が上顎切歯のすぐ後ろのスポットに接触し、歯が軽く咬合している状態である時、舌は良好な安静位置にあります。また、舌縁は、上顎臼歯に沿って口蓋周囲に位置しており、舌の中心部は平らで柔軟性があるという状態です。

安静にしている舌は、口腔内環境で継続的に数グラムの力を与える事は研究で明らかになっています。信じられないかもしれませんが、この継続的に発動する力は、歯を動かしたり、萌出を邪魔したり、それらの動きに関連する骨を変形させるだけの充分な力があります。

風が時を経て山を形づくるように、舌は口や顔の形成に貢献しているのです! そのため、活動していない状態における良い舌位置は欠かせません。

舌の安静時の位置が悪いと、口蓋の幅を育むことができません。口蓋、顔、顎が狭くなり、歯が正しく位置するためのスペースが十分に確保できなくなります。

安静時の悪い舌位置の例とその影響は以下のとおりです:

  1. 舌が下にあり、舌の先端が下の切歯を押している場合。これは、下顎が上顎に対して前方に成長しすぎてしまった状態で、これを下顎前突症といいます。
  2. 舌が継続的に、前や横の上下の歯間に出てきたり、乳歯が抜けた後の空いたスペースに舌が入り込む状態が続くと、歯の萌出(骨の上に生えようとしてる)が抑制され、正しい咬合ができなくなります。
  3. 舌背が口蓋の上や後ろを押し上げ、舌の先は低位置にある場合。この位置は、舌背が口蓋の後ろの方で押すための基軸点を求めるため舌の先は下顎の先端を押すという異常な位置をとります。そのため舌は深い口蓋をつくり、口蓋帆を弛め、気道を細くし、呼吸の妨げにもなります。これは、のちにいびきを引き起こす可能性があり、さらには閉塞性睡眠時無呼吸(OSAを悪化します。